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例えば、未来のクリーンエネルギーシステムを考えてみましょう。 太陽電池で大規模発電するには高純度シリコンの有効利用が鍵で、高結晶性シリコン膜の高速製造でブレークスルーを目指しています。 光から電気を作る太陽電池、電気から光を得るディスプレイ・照明ともに、光も電気も流す透明電極が重要で、希少元素に頼る現状からカーボンナノチューブ・グラフェンにより脱却を図ります。 ナノチューブのシリコンナノ粒子とのハイブリッドはリチウムイオン電池を高性能化して自動車を動かすのに有望です。 このように炭素とシリコンに元素を絞っても、広範にイノベーションを起こせることがナノテクノロジーのインパクトで、資源面でもサステナビリティーに欠かせません。
ただ、原子・分子を人為的に操作していては、ナノ材料をマクロスケールに製造できません。 無数の原子・分子が自然に組み上がる自己組織化が不可欠です。 原子・分子の化学反応過程から、ナノ構造体、更に高次構造体の形成過程を基礎的に理解するとともに、自由な発想で新しいプロセスを提案・開発しています。
カーボンナノチューブ(CNT)は、nmの細さとmmの長さを持つ特異な1次元材料です。
良導性で引っ張りに強く熱・化学的に安定という無機材料の特徴と、軽量で柔軟で塗布プロセスの適合性が高いという有機材料の特徴を併せ持ち、多様な用途が提案されています。 一方で、良質なCNTは極少量しか作れず金よりも高価、応用は進んでいません。 ものづくりでは化学・工学が主役、私たちはカーボンナノチューブのミリメータースケール高速成長技術を開発、実用的な合成法の確立を目指しています。 詳細はこちらをご覧下さい。 反応器の三次元場を活用したCNTの量産技術の開発、および基板上への直接合成による各種デバイス応用を進めています。
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![]() 世界トップクラスのSWCNT高速成長 高解像度版はこちら ![]() 流動層大量合成:動画はこちら |
グラフェンは原子一層からなる特異な二次元ナノ材料で、優れた導電性・透明性・機械特性などを有し、多様な応用が期待されています。
しかし実用的な合成技術の開発は、未だこれからです。私たちは、電子デバイス応用で必要とされる基板上への直接パターン合成技術や、
太陽電池やタッチパネルなどで要求される透明導電膜の低コスト合成技術を開発しています。
同様の薄膜は、CNTの分散・塗布によっても容易に作製できます。
フレキシブルエレクトロニクス応用に向け、CNT粉末を無駄なく薄膜化する技術も開発しています。 太陽電池は、これらの研究の重要な出口です。 多様な太陽電池が研究されていますが、多結晶ないし単結晶のバルク結晶シリコン型が、価格・性能・信頼性・安定性に優れ、依然として9割以上を占めています。 さらに安価にし普及すべく、同量のシリコンから数十倍の高結晶性シリコン膜を1分と短時間に蒸着する技術や、シリコンにCNTを塗布するだけの簡易なセル化技術を開発、環境・コスト評価も始めています。
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![]() 太陽電池用単結晶Si膜の1分蒸着と剥離 |
エネルギーデバイスは安価に実現されてこそ、社会に大規模に導入され、エネルギー・環境問題の解決に貢献できます。
我々は蓄電池を対象に、安価な原料を用いてナノ構造電極の高速・高収率製造や、高容量・高出力な次世代蓄電池の開発に取り組んでいます。 単層〜数層の細いCNTを分散・ろ過すると、スポンジ状の自立膜を簡易に作製できます。 例えば、当研究室の流動層法・数層CNTでは、厚さ0.1 mmのCNT膜は、密度0.3 mg/cm3, 質量3 mg/cm2と軽量で、80-90%の空隙と100 S/cm程度の導電性を持ちます。 従来はCuやAlなどの重い金属箔の上に活物質をバインダー・導電材とともに塗布して電極を作ってきましたが、 我々はこのCNT膜中に各種の活物質を包含することで、軽量・高容量な電極および電池の実現を目指しています。 特にシリコンは現行の黒鉛負極の10倍もの巨大な理論容量を持ちますが、充放電時の体積変化による構造破壊が大きな課題です。 蒸着技術は基礎研究では超高真空下でゆっくり丁寧に製膜する技術として使われていますが、民生ではポテトチップス包装のアルミニウム蒸着のように高速で安価な技術が実用化されています。 我々は蒸着源を融点より大幅に加熱して蒸気圧を高め、低温の基板上に蒸着することで厚さ数umの多孔質膜を1分と短時間で実現しました。 各種金属などへも展開、高性能電池電極の簡易・低コスト製造を目指しています。
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![]() リチウムイオン電池用多孔質Si膜の1分蒸着 |